「月とライカと吸血姫」の7巻を読み終わった。
最後のイリナのイラストのページをめくって、Special Thanksのページをめくって、そしたら、「あとがき」で、そこには、こうあった。
「今巻で完結です。」
わーん(泣
あとがきは、この文を含めて、4文だけ。Kindleの文字の表示の縮尺によっては1行程度で済むくらい。ちゃんとしたあとがきはWebで、だそうです。
いや~、完結だけに簡潔だよね~……とか言ってる場合ではない。
終わってしまったよ。とうとう……。
そして……よかった。
ホントにいい話だった。
泣いた。
1つは、月面でレフがイリナが持ってた首飾りの(そして、カイエのお母さんが殺されたときに奪われた耳飾りの)宝石、「月の石」の意味を知るところ。
これは、ずるい。
泣いた!
でもって、なにより、ラストだね。
最後はイリナさんだったけど。
アレは良かった~。
泣いた! じ~んと泣いた!!
この話を、東西の垣根を越えてみんなで月を目指したらハッピーみたいな話だと思ってた自分が恥ずかしい。
そんなこと書いてた前のブログを全部消去したい。
この話、そんな浅い話ではなかったですよ。
申し訳ない。
ごめんなさい。
見くびってました、この話。
人種差別、国家間の争い、戦争、人殺し、奪い合い、権力闘争、陰謀、暗躍……そんなものは関係なくて、人のハッピーを決めるのは、自分自身なんだというメッセージがとても、なんというか、純で、あったかくて、普通だったらひねたり、斜に構えたりしてまともに聞けないそんなメッセージを伝えるためだけにここまでの宇宙開発や月への有人飛行があったんだなあと思いましたよ。
つか、いろんなモノに翻弄されてもみくちゃにされてきたイリナさんが最後に至った到達点が、尊すぎる!
この話、宇宙開発に関わる青春偶像劇なのだと思ってたけど、やはり、イリナさんとレフくんを主人公とするヒューマニティの物語だったのだ。
もう、この話のラストはしっとりと泣けてくる。
敢えて言えば、人の幸せを決められるのは人自身というメッセージに、宇宙開発、というか、それを支える科学技術とかにある普遍性が親和性が高いってコトだろうなあ。
個の反対側に普遍性というのがあって、その両端だから相性が良いんだろう。
……ということで、ひとしきり感動した後、6巻、7巻を振り返れば、史実から逸れてフィクションの世界に入った「月とライカと吸血姫」の後半パートは、フィクションのくせに圧倒的な生々しさと説得力と臨場感で、架空のプロジェクトをあたかも本物のプロジェクトの小説化のように描いてて、引き込まれました。
もちろん、結局、飛んだのはソユーズを改良したことになってるけどどう見てもアポロだし、月面着陸で着陸に適した場所が見つからなくて燃料切れギリギリまで飛び続けた話とか史実がエピソードの素材になってたりと、嘘のつき方が相変わらず巧い。
SF作品としても優れてると思う。
翻訳したら、欧米でもヒットすると思います。
当然、今年の星雲賞にも推したいですね。
今の世界情勢でこの話の価値はどうなっちゃうんだろうと思ってましたけど、そういうのを超越してるし、むしろ、戦争のニュースの奔流でみんなが忘れかけたものを思い出させてくれるので、どんどん2期や劇場版を作るべき。
う~ん、久しぶりに心を動かされる話を読ませていただきました。
ありがとう~。
つか、コレで終わりというのが本当に悲しい……。